求婚/村上 和
丁寧に頭を下げながら言う
付き合いだして2ヶ月になる彼氏から
「似合うね、喪服も。」と言われ
不謹慎にも嬉しくなったことを
彼女は少し後悔していた
ちょうど同じ頃
かつて少年だった青年が
笑顔の可愛い
背の小さな恋人に
恋愛の終わりを告げていた
強がって笑うだろうと予想していた彼は
恋人の見せる2度目の涙に
ただ黙ってしまい
心の中で自分を情けなく思っていた
そしてそのまた同じ頃
アゼルバイジャン共和国という国の小さな村では
形のいい石を見つけた
まだ歩き始めたばかりの女の子が
人生で537度目となる
満面の笑顔を見せていた
たしかその翌日は
大規模な太陽フレアが発生し
警戒警報が発令された日だったはずだ
「この次に
ボクとキミが
宇宙のどこかで偶然出逢ったら
結婚しよう」
「けっこんしよう」
「じゃあその日まで」
―さよなら、みんな。
―また、遊ぼうね。
戻る 編 削 Point(5)