いのり/凪 ちひろ
 
雑踏の中 ふいに涙がほほ伝う
このままここで 倒れ伏してしまいたい
どこも病んではいないのに
心の痛みに耐えられない
何もないように笑っているあの人でさえ
胸の中には多くの悩みや人々を抱え
時には 一人 はりさけそうな声を出す

こんな所で こんな程度で
泣いている場合ではないと
何度も自分に言い聞かせ
そのうち 素直な好意すら
人に伝えられないまま
心の崩れる音を聞く

座り込んで泣いているあの子に
手を差し伸べたいと思っても
わたし自身の足場がとても不安定で
うつむくだけ

ただ孤独だと 自分を嘲ることは
きっと楽しいでしょう
けれどその陰に消えてし
[次のページ]
戻る   Point(2)