電子音の向こう/
永乃ゆち
物理的に日常は君の手の内にある
それは始まりの鐘と終わりの電子音
成り立つ現実はクラクションと排気ガス
感熱紙に爪の跡を残すのは意味のない癖だった
架空の現実はいつも雨空の上の宇宙にばかり拡がる
水たまりの中に世界があると思っていた頃
昼間の夢や真夏の雪を信じることは
画面に映る数値を疑う事よりも難しい
欲しかったものはいつも雨空の向こう
今も抱えるジンクスは
引きずる願いか大切な真実か
それさえも
電子音の向こう
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