私ではない/浩一
 
紙のうえに「私」と書くとき
その「私」は すでに
私ではない

つまり
私ではない「私」が哀れにも
詩と呼ばれる
むえきな騙りを
語りはじめるのだ

悲しいだとか
苦しいだとか

愛しいだとか
寂しいだとか・・・

紙のうえに「私」と書くとき
その「私」は すでに
私ではない

そして私も
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