踊場にて/シャドウ ウィックフェロー
気がつけば
いつの間にか足が向いて
またここへ来てしまった
かつて住んでいた団地の
懐かしい階段をゆっくりと上がる
そう11階の踊場
時間というものが無ければ
ここで君に会えるのに
この前ここに来たとき
殺風景なコンクリートの片隅に
水仙が生けられてあった
牛乳瓶に七分目の水
緑の葉と茎の先に
白と黄色の小さな花が二輪
命のミニマムのように置かれていた
灰色の中で花は光を帯び
思わず携帯で写真を撮った
でもあんなに美しいお月様がちっぽけにしか写らないように
撮られた花は小さくてみすぼらしかった
踊場から身をのりだすと
それはくらくらするほどの高み
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)