気持ちいい 穴 さようなら/木屋 亞万
 
ねむっているとき
ふとんとかさなりあっている
わたしはふとんになっている
あたたかくてきもちいい
わたしとふとんはあたためあう
もうここからはでたくない

わたしのまるまったからだ
ひとつぶんのあなが
かけぶとんとしきぶとんのあいだに
ぽっかりとあいている
いまはわたしがうずまっているが
いつかはここをでていくのだ

あたままですっぽり
かけぶとんをかぶって
ひざをかかえる
わたしはむかし
おかあさんのおなかのなかでも
おなじしせいをしていた

あたたかいみずがみちていて
わたしとおかあさんはつながっていた
あたためあっていた
おなかとせなかのあいだ
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