皿に乗せられた/長押 新
土は乾いていて、サラサラと。
女の手より柔らかい風が、表面を削っていた。
粒と粒が懸命に腕組みをしている。
もう少し湿った深い所は、虫の墓場であった。
背中を下にして、動いているカナブン、
ああいう甲虫は踏み潰せ、チカチカして、とても眩しい!
一匹、一匹、一匹、顎を噛み砕いて、虫たちを、
それも上等な虫たちを、はやく皿に乗せろ、乗せろ、乗せろ。
それでも、ほんの少しでも腐りかけたり、中身が、
干からびちまった虫は、皿には乗せるな、
うんと新鮮で、生きたまま動けない様な、肉体を、
たんと食べさせてやりたいんだ、子供に。
私の顎のように硬く、鋭い歯のない子供に、
汁気を帯びた、腹や、筋肉質の太ももを、与えたい。
草の根に隠れている、健康な虫たちを、
一匹、一匹、一匹、顎を噛み砕いて、虫たちを、
それも上等な虫たちを、はやく皿に乗せろ、乗せろ、乗せろ。
もうすぐ、生まれるぞ。血が下の腹に溜まって、音を立てている。
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