「虚体/アラガイs
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あの静けさにはどこぞの野良犬たちも眠れる夜だった 。
誰も覗きはしない冷やかな部屋だから
浮かびあがる「死体」は見なかったことにしよう
駆けつけたときに男が倒れていたのは宿命で、決して運命じゃない
そう思うことで、世の中の善良びとが何人かは救われることになるのならば /
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これは玉葱をカットする為に研がれたナイフだから
//鮮血は/手のひらに拡がる短夜を告げる/しっとりと薄く濡れた、紫陽花の根元へと流れてゆけばよい 。
)自虐的な意識に目覚めたのか
その後で女の口述は度々翻った 。
すべてを認知していたかのように
努めて冷静な素振りだった 。
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