街のかたすみに/寅午
 
子どものように眠っている

このちいさな命の 生きるスペースさえない
ぼくたちのひろく、大きな世界
おまえの、ちっぽけな願いさえかなわなかった
ぼくたちの豊かな世界

わたしにできることは
うごかないおまえの身体に
カラカラの冬の枯れ葉をかけてやることだけ


かの女は思った
これが、かの女の主人がはじめた遊びのひとつだと
主人はどこかにかくれ、かの女が見つけだすのを待っているのだと
かの女は律儀に主人の姿をさがし
来る日も、来る日も 街をさまよった
街はさわがしく、どこにもかの女のやすらぐ場所はなかった

ひとつ目の季節がとおりすぎた
ふたつ目の季節がとお
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