切り捨て難い暗がりへ/千波 一也
 

やさしいひとの
翳りを見つけた日は
こころに羽が
生えるのです

軽くなって
軽くなって
どこへも辿り着けない
わたしになるのです

落下は
とても重たい手段だと
そうしてはじめて
知るのです


正しい羽の危うさは
わたしの自由を許すこと
そして同時に
脅かすこと

見上げた先には雨雲がいて
欠いてはならない滴を
抱きしめます

わたしの捨てた暗がりも
もしかしたら其処で
恵まれているかも
知れません


かつてわたしは
光でありました

いいえ
光を恋うことを
自らの光としておりました

それとなく
悲しいひとを
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