銀河とんぼ姫/砂木
若い頃 林檎畑で見た光景
霜柱で凍る草の下に倒れるとんぼと
そのとんぼの上を 何度も上下に飛び
まるで助けようとするように 凄まじい気を
放っていたとんぼ つい 凍りの中から助け
しばらくしてから 目の前に飛んできたカップルのとんぼを
お礼を言いにきたように感じた
あれはなんだったのだろう 助けようとしたのは
なぜかメスだと思った バチッバチッ と
雷がとどろくような 空気を切り裂く気だった
静様を ふと思い出す 源義経の愛妾 静御前
私は昔から 舞姫 白拍子 静御前が好きだった
敵方 源頼朝に捕らえられ 子を殺され 命乞いするためには
頼朝を讃えねばならなかった 強
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