(連作) 公然たる敵/榊 慧
 
ながら、四肢はこそげ落ちる、
ややもすれば自分の意味を脅かしかねないような意味の種を心の中で育てながら
でしか、俺は意味しないのだろう、それでいい
されば笑える、俺は腐乱しながら漂うひとつのピアノであれ、
旋律は君の黒髪の流れのようにせせらぎ、再びの夜へと還るだろう、

お前のものを切り落としてやろう、敵よ
好きなものを言え、敵よ、お前だ
不潔なものは嫌いな己によってお前をつらぬく俺だ、
お前よ、迎合しろ、この己に。夜には帰る俺だから
愛するものは無くてよかったのだ。お前
「エチカ。」

響く、この体を果てしなく包みこむように響く、その言葉、
ふと、慄き、視線を背けた窓
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