「黄金虫」のいる時/麦穂の海
 
ない

彼らはすみれ色の夜明けに
思いを果たして昇天した

私が見たのは
さんざん高らかに歌い
生き物としても全うした生の
燃えかすの姿なのだ





帰宅して
アパートのリノリウムの階段で

今度はあおむけに転がる
こがね虫を見つけた

ひっくり返すと
緑色の甲羅は鮮やかで
容色は衰えていない

あおむけで緑色の美しいこがね虫は
あなたに似ていた

あおむけで
両手をあげて
両足をまげて
ベッドに横たわって動けない

あなたに似ていた


相変わらず端正な顔立ちで
介護ヘルパーさんに「ハンサムですね」
と、微笑まれてい
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