夜を織るひと/佐々木青
 

本当にひとりきり
誰にもたよることなく
おそろしい夢をまぶたのうちに
おさめながら縫い裁つ人―

ときおり
わたしたちが見る
おそろしい夢は
織り人のまぶたからこぼれた
なみだだということを

わたしたちは知らない

わたしたちがまれに夢に見てしまうような
身をふるわす寒さとふるえ
それこそがほんとうの夜のすがただということを

わたしたちは知らない

わたしたちは夜を愛する

この清らかな闇のなかでこそ
はるかのときをこえ
かがやきわたる星々は
しずかに息づき
わたしたちは
そのひかりを愛するものへと
そっと 贈ることができる

美しくつむがれた夜

わたしたちは知らない
夜を織る人のねむりにも似た沈黙を
ひそかに夜をつむぐ織り人のすがたを
わたしたちは知らない

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