彼女らはいずれも澄み切った声をしていた/吉田ぐんじょう
わたしは手を差し出した
握手をする
振りをするつもりだった
だけど差し出したわたしの指先を
確かに誰かが
ごつごつした骨を持つ誰かが
遠慮がちに握る感触がして
そこに存在することを強く願い、また強く信じれば
それは本当にそこに居ることになるんだと思った
しんたろうくんとあの子はまだ仲睦まじく暮らしているらしい
― 同棲を始めました。
― 喧嘩は楽しくありませんが、仲直りをすることは楽しいです。
という幸せそうな葉書が先日届いたばかりである
・
体のありとあらゆる場所のサイズを測っては
帳面に細かに書きつけている人だった
{引用=
親指の長さ :
[次のページ]
戻る 編 削 Point(26)