船に乗る/
吉田ぐんじょう
ように見えることを願って
ドアを開ける
二時間後に帰宅する夫は
永遠に完成しないパズルのある
時計の止まった
醤油のない台所で
立ち尽くしたりするだろうか
わたしの不在を埋めるように
パズルの続きをするだろうか
そうして最後のピースが足りないと気づくとき
わたしを思い出したりするかもしれない
船が動き出すまでの間
これまでのことを
ゆっくりと丁寧に思い出す
音のしないようそっと眼を閉じる
汽笛が鳴る
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