月に/ねなぎ
乱した
バッグの中身と
サンダル
音は響いて
乾いたような
音が響いて
泣いて崩れた姿を
呆然と見ていた
目も合わさずに
全ては無言のまま
投げ捨てられたバッグから
携帯やコンパクトが
アスファルトに滑って
音を立て
ドアは乱雑に閉じられて
頬を抑えたまま
動かない肩が
道路に向けられて
顔を俯かせて
音を失くして
大丈夫ですか
言葉を失くして
帰る
それでも
拾って
掻き集めて
送って行きましょうかなんて
間抜けた事を言う僕に
無言だったのは
優しさだったと
色さえ失くして
その傾いた背中を
覚束ない
足取りを
垂下がった
力ない肩を
反射で見上げた
二階の灯りを
そして
思わずに降りた
十年ぶりの
ホームで立ち尽くし
僕は
あの頃のまま
月を見上げている
戻る 編 削 Point(2)