月に/ねなぎ
 

なったのは
家に上げて貰えるように
なったからだった
散乱するレコード
適当に積まれた本
一人暮らし用の
冷蔵庫の扉から見える
痣の浮かんだ二の腕

僕が見上げていたのは
月だったのだろうか

泣き声が
混じっていたのは
聞きたく無い音
ベランダから
見上げた灯りは
揺れていた

あの頃の
月だったろうか
あの頃が
あの頃は

余裕も無く
過ぎていく日々に
バイトに没頭する事で
逃げていた
目の前から
目を逸らしたくて
いつも
ベランダで
タバコを吸っていて
そして流れていく
月日に
焦りが張り付いて

時々
帽子を被
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