無題/遠藤杏
ったことは誰も知らない
わたしが知らないということを誰も知らない
脳裏に焼き付けてしまった布きれの一枚一枚を剥がして
またうまい具合に貼り付ければ
すべてはなんとなく正しい方向にむかうんじゃないかって
みんな本気で思っている
脳も気づいていない事実に
人が気づくはずもない
いがみ合うのとは違うただ方向が違ってるだけ
瓦礫が積み上がったその上にまた埃が積もって、
いずれそれがなんなのかもわからなくなってしまう
形は形ではなくなって
心は心ではなくなって
物質は触れることのできない空気になって
肉体はちぎられて花を咲かす
魂は
間違いを教えてくれはしない
問いただしてくれはしない
だからもう一度口を開いて叫ぶしかない
今から叫ぶ言葉だけが、
わたしにとって唯一の真実になりえるから
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