風景の記憶/真山義一郎
は人妻だったけど
俺にとってはどうでもいいこと
二人、並んで
「ごっつええ感じ」見て
一緒に笑ってることの方が
ずっと、ずっと、大事だった
あれから十六年ぜ
嘘みてえだ
十六年経ったってことが嘘みたくあるし
お前と過ごした
あの日々が
嘘みたいに思える時もあるんだ
だから、俺はそれを確かめたくて
十六年ぶりに
あの街を訪ねる
愛とセックスと、
憎しみと屈辱に塗りたくられた
あの街を
おいおい
廃墟ぜ
ここは
街は再開発という破壊のあとで
あれもこれも
新しい色に
ぶっ壊されてる
でも、俺は
路地裏を見つけるのさ
猫がいて
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