マルクスのかばん/アラガイs
 
払える金はなかった
それならば…と、
わたしは自ら機械の免許を取るため教習所に通った 。
やっとの思いで免許を取ったころ
すでに機械は錆びついて動かなくなっていた。
また、新品の鍬で我慢しなければならなかった 。

荒れた畑の土はいまでも予想外に硬く、掘れども〃新品の鍬でも歯が立たない
そこで新しい機械を借りることにした。
やがて十年が経ち、やっとその機械を手に入れることができた。
しかし、これでまた三十年働かないと元は取れないことに気がついたわたしは、働く意欲がなくなってしまった。
そして、手間のかからない胡瓜に種を変えた。

枯れ葉も堆肥に十年が過ぎるころ
カボチャの値段はすっかり下がり
ここ何年も続いた水害で胡瓜の値段だけが跳ね上がっていた。
いつのまにかわたしのまわりにはおカネが増えていて
(季節はひとときの気まぐれに流されてゆく)
広大な土地を手に入れたわたしは
いまでは種のない葡萄の権利書を鞄に入れて持ち歩いている 。









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