片目は閉じられ時間は消えて/水町綜助
夏に
瞼を虫にさされたので
片目があきません
いくらか黄色を
強めに帯び始めた
八月のカーブ
片目で町を走れば
遠近感がなくって
前の車も
白線も
ドアーも
濡れたボトルや
余白や
誰かだって
どこまでか
きみにあげたあの本には
たぶん
目に見えている
愛情を持てる人と
それを見ている自分と
その間に確実にへだたりとしてある
距離と
時間の
関係性について書いてあったと思う
たしかきみはそれにひとつ
またひとつ玉薬を飲み込むように
うなづいて
僕たちが始まった
それでお互い
いちばん薄いところを
すりあわせて
「このためだけ
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