あの時は気付けなかった思い出/板谷みきょう
なこと
を話し始めた
家から遠く離れた山の中腹の
汽車とバスを乗り継いで来た
この老人ホームは
自然に囲まれているのじゃなく
人里離れているだけのこと
隣の病院は精神病院だったこと
じいちゃんの死に目に会わせることが
普段からひとり遊びばかりをしていた
子供のボクの精神には受け容れられなくて
後日にでも体調を崩す可能性があると
相談を受けた医者が言ったかららしいこと
ばあちゃんは耄碌してるだけじゃなくて
呆け始めてたこと
じいちゃんも、ばあちぁんも
居なくなった家に父さんと母さんと
ボクたち三人の子供だけが
暮らすことになって
父さんはカローラを買った。
そこで記念写真を撮影して
彼方此方と旅行に出掛けることが増えた
その旅行には
ばぁちゃんが参加する事は無かった
あの時は気付かなかった
あの時は気付けなかった
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