Will the Summer Make Good for All Our Sins/本木はじめ
たくさんの幼虫が蠢く洞穴のなかで
オルゴールのような声で唄っているきみ
もう、助けてあげることができない
ぶくぶくに太った溺死体の窪んだ眼光
黒い海のなかに放たれる廃校のように
もはや見るものは全体の影ばかり
透き通ったものなどひとかけらも失われてしまって
きみは幼虫
無数の汚くも儚い糸でもって
世界を繋ぎ止めようと
微生物の沈殿のように浮遊するが
あまりにも巨大なきみの人生
海底にゆっくりと落下して
もうそれからは
黒い腐敗となるほかなく
遠い昔に飲んだ
休日の紅茶の味を
海流にどす黒く吐くばかり
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