板谷基雄のこと/板谷みきょう
 
があるんじゃ!
何処から来てると思ってんじゃコラッ。
地元じゃないんじゃ。ボケッ!

小栗旬に何とか戻り礼を告げて
病室へ向った。

扉を隔てた613号の個室の中から
ケダモノのような呻き唸り声が聞こえてくる。

病室に入ると寝台に寝ているのは
麻薬中毒患者のような
髪も斑に
浅黒く痩せこけたギョロ目の男だった。

食道を通過しないせいか
チリ紙で唾液を拭い取っては捨てている。
寝台の直ぐ横に置いてあるダンボール箱一杯に
捨てられているチリ紙は
溢れそうになっていた。

抗がん剤と併せて
持続点滴で
モルヒネ投与をしているらしいが
痛みが消えないよう
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