怖るべき子供たち/シホ.N
ちッちゃな子供が
こちらを見上げてしゃべるのだ
まだたどたどしくて意図がくめず
まるで異邦の言葉
大人は子供の
言葉の一つ一つをやさしくつむいでやるが
二人の伝え合いはあまりうまくいかない
ちッちゃな異邦人!
小さい頃言葉がなかった
その頃は匂いに包まれるばかりだった
匂いの中
風の中に小さき者たちはいた
言葉をもたず
けものの影が疾駆する
怖るべき子供たちがいた
空には雲
水溜まりにアメンボ
そんなこと
言葉にしなくてもよいこと
言葉でなど伝え合わなくても
よいじゃないか、小さな同胞!
怖るべき子供たち
そして本当に怖るべきは
自らにおける
あのちッちゃな頃といまとの
時間の隔たり
匂いを嗅げば
それを郷愁などと名付け
小さな彼らを
異邦人と呼ぶ
言葉をもつに到った
怖るべき
恥ずべき時間
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