梨の花が散るとき/かんな
 


そういえば
姉の名前は
梨の華と書きます
はじめての孫に祖父が名づけました。

昨日の午後に
私はのこぎりを持って
全身を使って
梨の枝を切り落としていました
父と一緒に
汗だくになって
とりあえず五本ほど枝を落としました。

その夜になって
病院でベッドに横たわる祖父を見舞いました
決して「じいちゃんの梨の木、切ったんさね」
とは言えなくて
たまに開く目をじっと
逃さないように見つめていました。

六十歳近くになってから開墾し
今まで二十数年
広大に広がっていた梨の畑は
白い花で咲き乱れています
枝を切るたび
花びらが散って
祖父の命を思ってしまいました。




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