さいなら/ズー
 



蜘蛛の子のように飛び散った字で書いてあった
あなたという人のために書いてあった
ぼくの水色のバンのワイパーにはさまっていた、かみきれに、
ぴらろーん、んぴらろーんと、揺れていた、その、かみきれには、こんなことが、書いてあった
きみがきれいだと誉めてくれた、わたしのぴーちゃんが、隣の家のこどもに、いじめられ、とべなくなった、わたしたちの小鳥が、みあたらない、今朝の部屋で、こうして、あなたに手紙を書こうと、みすぼらしい髭を剃り、寝癖を整え、ペンを握り、きみと買いに行ったグラスを、重しがわりにし、やあ、とだけ、書いた紙の上に、何時間も頭を沈めているのが、今の、わたしなのです。
昨夜
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