括った髪の分だけ、返して掌/渡邉建志
 
しみがあなたの上に降ってくるのを
私は今でも想像することができます。
私はそんなあなたを愛しながらも、憎んでいました。
私はあなたになりたかった。
誰からも愛される、天からさえ愛されるあなたから愛される
ことを誇りに思いながら、でもいつも、あなたがまた
天にさらわれていくのではないか、
いやもしかしてあなた自身が天なのではないか、と思いました。
しかし、あなたのとなりにいても私はただの人間でした。
あなたのそばにいるからこそ、私は自分の平凡を恥じ、その裏返しに
あなたの不幸や失敗を、実は願っていたのです。
完璧なあなたに汚点がつくことで私はこの上ない快楽が得られるだろうと
そんなことすら思っていたのです。





贖罪は届かない。いまや天は僕を捨てたからだ。
それは予告されていたことだった。僕があなたの不幸を本当に望んだからだ。
僕は天を最初から憎んでいたからだ。
したがって、今夜、僕は自らの力でこの町のあなたのすべての残り香を盗むのだ。
すべての奇跡や出現をあの青い七月(Julius)に返すために。
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