狂気の冷徹/シホ.N
 

この真昼
かいま見る
白日のさなかに
真夜中の闇
見てはならぬものを見て
見ぬふりをしたくなる
光の中に
あってはならないはずの
漆黒のかげ

光はあるのだ
たしかにあるのだ

真昼の雑踏
不意にかちあう沈黙
針が重なる正午の一瞬のような
見えない静けさに満ちる道

ほら今あそこの
ブロック塀が道に落とす
くっきりと黒い影
もっというなら
そのブロックの継ぎ目のわずかな
細くしかし深い闇

そしてそれらもすべて方便の姿
あの漆黒そのものでない

たとえば輾転として目覚めている夜
闇の中に光の幻を見る
でも今見るのは
それの裏返しでは
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