四万六千日/蒲生万寿
 
今日の浅草は何時にも増しての人だかり 
四万六千日の法要が執り行われる 
コジキもカッペもガイジンも 
皆ひとえにに観音様の功徳にあやかろうとやって来る 
篤い信仰ある人も 
観光のついでに立ち寄る人も 
赤い鬼灯(ほおずき)を眺めながら 
手を合わせ頭を下げている 
僧侶の読経と早打ちの太鼓 
堂内のざわめきと絶えることなく放り込まれる賽銭の音が 
広くて高いお堂の天井に跳ね返され 
私の頭上から降って来る  
それは混沌の中にある見事な調和を得た世界 
私の後ろには「人生なんて、あっという間よ」と言いつつも 
一心不乱に観音経を唱える水商売風の女 
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