反転/ズー
 
わ」と
言うだけになり
ぼくらもいつの間にか
話題にしなくなっていた
秋と、冬をすごした頃に
その、ぼくらの背中を
母さんは夏のあいだ中
眺めていたってわけ
なんだけど
その光景を生意気な弟と、ぼくらも
ひどくささくれ立った
家の窓枠にしがみついて
毎日眺めていた
きれいな女の子だった
毎日僕の家の前をスキップしながら通りすぎた
飴細工みたいな髪を
束ねた女の子が
「そんなの嘘だ」って
いいたくなるくらいの
「朝があるんだ
十本すべて
のゆびを、ぼくの
からだに入れてほしい
そう、
うん、
あなたのゆびを
ぼくは、
夢をみる日があって、
時々
[次のページ]
戻る   Point(3)