サマー・ヴァケイション/DNA
た
机のうえには銀や銅でできたコインが数枚転がっており 孔のあいたものを選んでは
その先にこの夏、自然発火した女が見えないかと繰り返す
*
ガラス瓶を灰皿の代わりにしているおまえは昨日、
誤って底にペンを突き刺してしまったことを酷く後悔しているね
突き立てるものが小指でも短刀でもペニスでも、その後悔の質量に
変わりはなかったと云ってさめざめと泣いている
*
短い独白の後に、それらがすべて誤りだったとせびる役者の背中には夏の、
割と明るい夜の星空が似合う わたしにはこの夏を越す理由のひとつだと思えたが
変わらずおまえは男の全身を漂白することに魂を賭けていたのだった
*
橋の両端で突っ立ているわたしたち 夏の夕暮れ
河原でひとり祖先をおくっている男から焦点の深い写真をもらった
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