釘を抜く/yo-yo
学生のころ帰省の旅費を稼ぐため、廃材の釘抜きのアルバイトをしたことがある。
真夏の炎天下で一日中、バールやペンチを使って材木の釘を抜く。ただそれだけの単調な作業だった。
毎日、早稲田から荒川行きの都電に乗って、下町の小さな土建屋に通う。場所も忘れてしまったが、近くを小さな運河が流れていた。
朝行くと廃材置き場に、釘が打たれたままの木材が山積みされている。作業をするのは、ぼくがひとりきりだ。
社長である主人は、終日工事現場に出ているので会ったこともない。女主人もほとんど顔を出さないので、まったくの孤独な作業だった。ただ黙々と釘を抜くことに没頭するしかなかった。
現場で手荒く解体され
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