せっせ/ああああ
 
、その通っていた図書館の館長さんは、お別れするとき

「君の読む本はもうここにはないから、これからは好きなところにいって、いくらでも好きな本を読みなさい」

と、ぼくに言ってくれた。

 その館長さんが、今の発表者だ。

「独自の調査を恐れてはいけません。ここもここも、まだ誰も来たことがない場所です。」
 
「ここもここも」。言いながらおじさんは壁から壁、本棚から本棚にとびうつる。

 よかった。ぼくは安心した。あんなふうにジャンプできるのはおじさんだけだ。これでみんなもおじさんを見なおすだろう。

 でも、ぼくは
 
 「進む場所は、いくらでもあるのかもしれないけれど、帰る場所はないのです。それで、あれ以来ずっと、さみしい思いをしているのです」
 
と、おじさんに言いたかった。そう言ってできれば、おじさんに頭をなでてもらいたかった。
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