失楽園/長押 新
断する壁が喉元から舌にかけて腫れ上がる。とても吃らずにはいられない。
眠りましょう、眠りましょう、祖先はわたくしの自由を食い尽くすように、わたくしを草原から引きずり戻そうとする。「あの草は血を吹いているの?」あれは花だよ。「こんな所に花が咲くのかしら?」咲いているのに咲いていないことはあるまい。「花は歌うかしら」歌があったら歌うよ。草にしがみつくように、一つの花が咲いている、祖先のために赤い薔薇が咲いているのだ。わたくしはそれが見たい。そこではそれをわたくしのために摘み取ることが、わたくしにはできる。
ベンジャミン・ライナスが何度も執拗に繰り返す無実の人々にわたくしは含まれているのだろうか、裸のまま両手をあげて近寄ろうと、する。乳房の奥に瞳があるのか、わたくしは見つめ合う。足の裏を見せてほしいと彼は言う。靴は履いたままだった。恥ずかしい唇と心臓が飛躍していくのがわかる。わたくしは珈琲を客に運ばなければならない。アメリカから運ばれて来た珈琲を。それは祟りなのかしら、足の裏が踏んでいるのは美しい絨毯。破裂する喜びのなかにうまれていた。
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