失楽園/長押 新
祖先の祟りが身体の中で眠っている。彼らを眠らせるために薬を飲み、その副作用で唾液を口に溜め込みながら、草原のなかに立たされている。草原はホテルの隙間に現れる、古い虚構の中に置かれた、アメリカの地雷。二流ホテルで働くわたくしはアメリカの他には国を知らない。第二言語として話すアメリカ語は日本人訛りが強く、アメリカ人だけがそれを笑う。
そのせせら笑う歌のような息遣いが、I still、そして祖先が強く眠る。草原に立たされていた、はるか眼下にもわたくしのようなものは居ない。誰もおられないのにわたくしは居る。そうしたこともあって、アメリカの地雷を思い出した。地雷は幼い乳房のように、埋まったまま静かに寝
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