花の名前/あぐり
 


呪いみたいに花の名前を教えてあげよう
空からも飛べない日には
なにもかもが微笑ましいあかるさ
たとえば
さようならよりも遠い灯台で
みつけだされてしまう色
どこからでもふと
わかるのが恋だという


しあわせにいきていると
どうにも現実ばかりがすべっていくようにおもえます
無意識にしがみつけばはがれるかさぶたの
ゆるやかな感覚として赤い花の名前がありました
どうしてこんなにも白い、
からだを通して流れていく景色のにおいが熱い
頭の中で響くのは音でも声でもなくて
無理にでも口に出すのなら
花の名前になった


だから
呪いのようにあの花の名前を教えてあげよう
なにもかもはねかえして光っている紙の上
何度でもこの花の
この赤い花の名前を教えてあげよう
その為だけに今日も花影の隣で
芯をたてながらあなたの輪郭を撫でる








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