歩く/アマメ庵
 
家から駅までは、坂道と緑の多い住宅街。 
バラがキレイに咲いた庭がある。 
ゴム底の靴は、足音がしない。 
駅まで、たくさんの人が追い越していった。 
東京の街。 
君と手をつないで歩く。 
ぼくは、きょろきょろ歩く。 
雑居ビルの看板や、向こうの歩道のオジサンを観察する。 
ツツジの隙間の空き缶に、誰も気が付づいていないのか。 
大きな駅。 
人がたくさん、たくさんいる。 
みんな同じスピードで、秩序を保って歩く。 
プラットフォームに上がる階段。 
発車ベルを聞いて駆け上がってきた人と、肩がぶつかった。 
都会のペースには、合わせられないのかもしれない。 
帰りは、各駅停車で帰ろう。 
各駅停車は、快速や急行よりも時間がかかる。 
全部の駅に停まるから。 
全部の駅に停まるのに、一部の駅にしか止まらない列車より空いている。 
別に急いでないから、良い。 
ゆっくり本が読めるから、良い。
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