『リスカ/チカ』/川村 透
画のように
チカの胸に戻ってくるありがとうありがとう
きぅう。きぅう。
赤、白、青、黒
はじけた風船たちは
色とりどりのキズとなって母の胸に肩に腕に手首にへばりつく
ウツクシク傷ついたチカたちは
静かに泣き笑い、しながら細く薄く、小さくなって
僕のてのひらに微笑みのカタチだけを刻んで消えた。
チカのピアスたちがしゃりしゃりと、てのひらからこぼれて
僕は最後の、キス、をした。
そこにはもうキズ、だけしか残っていなかったけれど。
--僕は彼女の写真を、白く明るいハダカを忘れない
パールの明度とオレンジの彩度
君はマーメイド/マーマレード
あるいは風船でいっぱいの海/渋谷/チカ
--白い腕には幾重にも、おごそかな赤い、キセキ
リスカ。
チ カ
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