囀り/渡 ひろこ
 
を平面に映す
イビツな形の収まりがつかなくても
その輪郭をなぞってもらえたらと


もしその断片をあなたが拾ったのなら
指先に伝わる小刻みな揺らぎに
しばらく耳を澄まして
一行の裏で小さくあえぐ吐息が
美しく響くか否かと


脈打つ鼓動の在りかを見つけたら
行間の谷底に潜む
何も纏わない裸のわたしを
そっと拾い上げて 手のひらに乗せて


わずかでも濁った声で囀り
黒く曲がった旋律を見透かしたなら
そのまま黙ってギュッと握り潰して


もしも、もしも
受け入れてくれるなら
私はあなたの手の中で
詩のベクトルに向かって
止まない蒼の歌を囀り続ける


今夜作られる物語のためにも
これがプロローグだということも


これからさきも、ずっと





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