テンオアラの嫁/リンネ
 
「心地よいから」と女。「欲望は決して満たされない」とわたしは言い返す。「本当は四月ごろがよかったんだ。蜂が殺気立ってるからね」悔しがる女。床に日本刀が落ちている。それを取り上げ、女を思いきり切り捨てる。(そのとたん、一緒に捕まっていた子どもたちはどこかへ消えてしまった。)奥の部屋から知らない男が現われる。わたしはもう一度日本刀を握りなおし、その男に立ち向かおうとするが、振り下ろす間際に、自分が持っているものが日本刀ではなく、ただのパン切り包丁だということに気がつく。殺気立つわたしの目の前で、男が静かに怪談話を始める。消えたはずの子どもたちが全員ベランダに立って、こちらを見ている。




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