テンオアラの嫁/リンネ
 
ードを緩める気配がまるでない。停車場所はここではなかったのだろうか。電車はますます勢いを強めてこちらへ向かってくる。



ここは締め切った部屋にもかかわらず、風がいやな音を立てていた。どこから吹いてくるのだろうか。女の長い髪があれだけ巻き上げられているところからみれば、単なるすきま風ともいえないだろう。「ああ、すいません。うっかり閉め忘れていましたわ」と、女は申し訳なさそうに言い、髪をたなびかせながら部屋の奥へ向かうと、開きっぱなしだった電子レンジの扉を閉めた。その瞬間、風はぴたりとやんだ。



するとプラットホームに一人。乗車して、扉が閉まる。電車は動かない。運転手はいる
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