Phantasmagoria/雛鳥むく
 
で覆うだろう
そうしたら
夜がきたぞ って
大声で叫びながら
銃器を棄て、
暗幕越しに
火気のない交信をしよう。

街は、
季節外れの
クリスマスソングに
浸されているから
容れるように
受け容れられるように、
つめたい
摩擦係数を
忍ばせていく、


遺失物のように
誰かを待ちわびる街。
人もまた街を待ち
泣き濡れて

重力に
隷従する
葡萄の一房、
ひとつきりの平衡が
氷漬けにされている
化学繊維によって
街に組み換えられた街

固有名詞が
焼死した街頭に、
流れおちる
恋することのないクリスマスソングが
ひどくあたたか
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