2277-01/雨伽シオン
 
輸血パックに詰めた精液を啜りながら、きみは万年筆を走らせている。唇からこぼれた白が青いインクで刻まれた文字列に滲んで、たちまち海となった。そこから生まれた少女は桃色のゼリーに包まれていて、透けて見える体は胎児のように丸まっていた。彼女が蠕動するたびに粘液が紙に染みこんで、甘ったるい香りを放つ。少女はきみの初恋の女であり、きみを遺して死んだ女だった。きみにとって最も美しく、最も愛しいただ一人の女だった。きみはペーパーナイフを握り、女の子のスカートをめくるようにゼリーを切り裂きはじめた。
きみに浴びせかけられた精液と無糖炭酸水によって喉を灼かれた私は、抑えがたい嫉心に駆られた。私はこの春、きみと
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