春/藤村 遼太
 
ないで……。

一歩、たった一歩なんだ。一歩踏み出すことが出来れば、あとは大丈夫だと思うんだ。

青葉がしげり、桜のあわい紅色が町をおおう。

桜の淡い匂いが、暖かく優しい風にのって漂う。

瞳を閉じて

耳をすませると聞こえてくるよ

瞳を閉じれば、いいの?

うん。

本当に?

信じて。

分かったよ。

静かに、囁くように僕に教えてくれる。

「何も怖がることはないよ、大丈夫」

桜の花びらが綺麗に舞う。

僕の心に広がっていたモノが

ひらひらと綺麗に舞う花びらと一緒に飛んでいく

もう少しだけ、頑張っていこう。

前を向いて、歩こう。

一歩踏み出す勇気は、この掌の中に。

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