つや子が見せてくれた夢/遠山律子
 
はこんなにも優しくて
勇ましい犬だったのねと

あたしは地震や津波の怖さも忘れてしまって
つや子の勇姿に涙ぐんだよ

目を覚ましたときつやちゃんは
じっとあたしを見ていたね

何もかも 
夢だったんだってはにかみながら
額の汗を拭ったとき

ごうごうと地面がうなって
ほんものの 地震が来たね

つやこを抱いて逃げ込んだ
トイレの額は真横に飛んで

ランプのカサから
わたぼこりが降って来た

買ったばかりのテレビが砕けて
あたしは足をざっくり切って

電気も無い 水も出ない
何もないまま毛布に包まり

夜が更けてから見下ろした
下界に広がるあの業火を
あたしたちずっとずっと
 忘れないね









戻る   Point(3)