つや子が見せてくれた夢/遠山律子
はこんなにも優しくて
勇ましい犬だったのねと
あたしは地震や津波の怖さも忘れてしまって
つや子の勇姿に涙ぐんだよ
目を覚ましたときつやちゃんは
じっとあたしを見ていたね
何もかも
夢だったんだってはにかみながら
額の汗を拭ったとき
ごうごうと地面がうなって
ほんものの 地震が来たね
つやこを抱いて逃げ込んだ
トイレの額は真横に飛んで
ランプのカサから
わたぼこりが降って来た
買ったばかりのテレビが砕けて
あたしは足をざっくり切って
電気も無い 水も出ない
何もないまま毛布に包まり
夜が更けてから見下ろした
下界に広がるあの業火を
あたしたちずっとずっと
忘れないね
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