リライト/木屋 亞万
 
黒鉛を紙にこすり付ける
それをゴムで消し落とす
ひたすらその作業を繰り返す
紙は少しずつ擦り切れる

真っ白なゴムと黒鉛と紙を擦り合わせ、汚れたゴムの屑にする
紙には言葉の溝が枯れた川のようにうっすらと残る

消せるもので書いている間はいつまでたっても完成しない
ボールペンに持ち替えて書き始める
今度は紙が何枚も丸められて屑カゴへ行く

もう何も伝えられないかもしれない
どれだけ書き直しても言葉は心を包めない
この心を柔らかな風呂敷で包んで、届けなければならない
名もなき私から、名を知らぬあなたに

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