enjoy the silence / ****'04/小野 一縷
 
鋭く冷たい
大木の穴を覆う羊歯の上に佇むみなしご
盗んだ真鍮の懐中時計はもう動かない

静寂から生えてくる透明な不安の芽
麻の苦い香りのようにまだ若い希望
老人が沈黙の中に枯れるように眠る
若者たちは酔ったまま町から帰ってくる

静寂から浮き上がる飼犬の唸リ声に隠された虚栄心
見世物小屋から逃げた小人の物悲しいでっちあげ
子供の背中のように滑らかな蝋細工の聖母
汚泥とまだ意味を持たない言葉が次々流れる大河


言葉は静寂という水脈から こうして湧いてくる






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