眠れぬ森のロミオ / ****'01/小野 一縷
 

いつもどおり 
「ぼくはまだまし」って思わせて


ねえ ロメオ
時間だよ 
起きてよ ロメオ
お願いだ


ロメオ 
陽の光を浴びれぬ きみは
昼なき森の猛禽類
鬱蒼と茂る不安を狩るのに疲れたら
もっと深く眠ろうか
甘美なる魔王の草汁 酒に含んで 
くちうつし





使い古されたアドレナリンなんて 苦味の消えた紙屑以下だ
重要なのはセロトニンとドーパミン
それとアルカロイドの二、三種類
ヴィタミンRにミントタブを混ぜるのは有効だけれど
優しさ半分のアスピリンなんて この頭にはプラセボにもなりやしない
あのシロップを 舐めてから 女の甘さはとっくに捨てた
この真紫の唇を 綺麗と言ってくれる きみがいる
きみの足音が 霞んだ木洩れ陽を踏みに来る
凍える唇を潤す唾液から甘い味が消えた時
歯と骨の隙間を打ち鳴らして きみの為に歌うから
あの娘の夢を見られるように
この森もっと奥深く 埋もれさせてくれ
きみの林檎味の唇で









           題名、なかのゆみ様より

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